H31千葉前期試験(数学)

2019/02/26 投稿

今年は規則性ではなく、空間図形、しかも証明の形式で出題されたのが衝撃。

難易度が高いわけではないが、上位校でも動揺してミスした生徒はいるだろう。

どの科目でも大きな変更点の可能性はあるので、千葉県の過去問だけでなく、『全国入試問題正解』などで、広く対応力を養いたい。

 

【1】計算

今年は(4)の等式の変形以外では、符号ミスを誘発する要素は多少あったので、ここ数年では1ミス程度は多そうな印象。逆にそこを意識して普段から練習を心掛ければ、下位校では大きな5点差につながる。絶対に落としてはならない大問。

(2)は指数がカッコの中にあるとミス多発パターン。数値的には2²ではミスしようがないし、分数が消える親切なつくり。

(3)後の分配で符号を忘れる生徒は必ずいる。これでカッコの中にマイナスがあるとさらに危険。

(4)有理化とルートを簡単にすることだけに意識がいくと(別々に操作する)、符号を落とす生徒がいて危険。難しくはないのだが、この問いのマイナスを落とす可能性がいちばん高い。

(5)もはや定番となった解の公式。符号ミスも含めて計算精度を高めたい。

 

【2】小問集合

決して難しくはないのだが、ここ数年では最も得点率が下がりそうな印象。あせる心理にかかる仕掛けがあって、今年の平均点に大きく作用しそう。

(1)レンジという言葉を落としている生徒は必ずいる。それでも身長の範囲という日本語を落ち着いて考えれば間違いようもないのだが。。。

パッと見で飛びつきやすい1番目と5番目の差がまた見事飛びつきやすい整数になっているのが秀逸。かかった生徒が少なからずいそう。とは言え、この大問の中では正答率は高い。

(2)次に変化の割合。意外にミスの多い反比例での変化の割合。これは2年以降で変化の割合が出てくるため、反比例での演習が少ないためである。経験で解く生徒はそれだけで対応できないし、符号のミスが多発しやすい。

(3)まったく難しくなく、連立方程式で解くだけなのだが、あせりがそれを許さない(そもそも数学が苦手な生徒は連立は時間がかかると思っている)。あわてて適当な数字を代入しだすと意外に苦労する合計24個。箱代がそれを増長するニクいつくり。あせって自滅する生徒が多かったと推測できる。

中学受験では「つるかめ算」で容易に解ける。

まずゼリーをx個、プリンをy個とすると、これらの代金の合計は支払った額(2420円)から100円引いた2320円

80x+120y=2320

40で約分できるので

2x+3y=58

買った24個が全てゼリー(x=24)だとすると(プリン0個)

2×24=58-10

xとyの係数の差が1なので、この足りない10がプリンの個数

逆に買った24個が全てプリン(y=24)だとすると(ゼリー0個)

3×24=58+14

この余った14がゼリーの個数

(4)「絶対値が2以下」これだけの要素があるだけで難易度がグンと上がる。

さいころは表をつくり、埋めるだけなのだが、焦りから数え間違えた生徒も多いだろう。

全体的には(3)の方が正答率は低そうだが、上位校ではこちらの方がミスが多いかもしれない(ミスしてはいけないが)。

(5)完全に千葉の作図は上位校では落としてはいけない条件になった(それでも簡単というレベルではまでではないが)。

今回は二等辺三角形(ひし形)の作図で、角Oの二等分線から、その直線に向かってPから垂線を下すだけ。作図の演習も厚めにいきたい。

 

【3】二次関数

オーソドックスな問題が出た、という印象。上位校ではここまでは全てしっかり解ききりたい。

(1)これは落としてはいけない問題。落ち着いて座標を代入するだけ。

(2)①【2】で正答率を下げたバランスで、ここが取らせる問題。

二次関数では、2点A(x=2)、P(x=-6)を通る直線の

傾き(変化の割合)はa(A+P)

切片は-aAPで瞬殺

今回は-1/2×2×(-6)=6

(2)②面積が等しいと言えば「等積変形」、「等積変形」と言えば「平行線」と「三角形」

点Qを通るABと平行な直線を考えればよいだけなのだが、この直線とx軸との交点は明らかにx<0の範囲。

そこで直線ABと反対側に同距離で平行線を考える。

そのためにまずは直線ABの式

先ほどの公式より

傾きは1/2(2+6)=4

切片は-1/2×2×6=-6

y=4x-6となり

Qを通る「平行線」とはy軸上で見る(切片どうし)と12

よって求めたい「平行線」は

y=4x-6-12

つまりy=4x-18となる。

これのx軸との交点(y=0)を求めればいいだけなので、代入してx=9/2

 

【4】平面図形

(1)は取らせるための問題で、(a)は見た目にも間違えようがないので、いくら演習が少なめに出やすい平行四辺形の条件でも(②が平行、③が等しいを表した式なのは一目瞭然なので)、落としてはならない。

証明も、相似の証明で二角は明らかなので、図は少しゴチャつき気味ではあるが、比較的やりやすかったのではないか。作図と合わせて、近年では得点しなくてはならない問題になった。

(2)決して難しい問題ではないのだが、気付けるかが問題で、自分も5分考えてあきらめて、時間で改めて見た時に気づいた。50分の枠の中では上位校の生徒でも気付けるか疑問。

着眼点としては、相似で考えるにしても、FS方向の直線の情報がないことに気付けるか、三辺既知の二等辺三角形GPDの存在意義に気付いたか。

どうしても相似の証明に気をとられて、最初は△EQRの方に目がいってしまった。

まず、四角形PQRSはひし形であり、△EPS∽△FGSでどちらも直角三角形。

二等辺三角形GPDのPから垂線を下せば、この垂線とEFは長方形の対辺で長さが等しくなる。

三辺既知の高さの求め方は

垂線とDGの交点をHとする。

まずDHをxとおくとGHは(3-H)

まずは△PHDに注目し三平方の定理

PH²=PD²-HD²=2²-x²

今度は△PHGに注目し三平方の定理

PH²=PG²-GH²=3²-(3-x)²

これらが等しいので

2²-x²=3²-(3-x)²

これを解くとx=2/3

再度三平方の定理でPH=4√2/3=EF

PG:GS=3:2=EF:FSなので

FS=EF×2/3=4√2/3×2/3=8√2/9

 

【5】空間図形

全体的には決して難しくないのだが、私立上位校を一般受験していないと、空間図形は手薄になりがちである。

規則性をがっつり演習していた生徒にとってはかなりキツかったと思われる。

公立組と私立組の差異を埋めるために、知恵テストのようなつくりで、私立上位校演習組でも、落とした生徒は多そうである。前期後期1本化に向けた手始めと思って良さそう(受験が後ろにズレるので、学校の空間図形の授業が終わってから入試演習に入っても間に合うようになる)。

(1)①水の体積とはなっているが、結局容器(円錐)の体積を求めるだけなのだから、いくら終盤であせっていても、間違えてはいけない。ましてやπ忘れなどはもってのほか。

(1)②これがおもしろい。あふれた水、となっただけでいかほど正答率が下がるのか。いっぱいに水が入った状態からなので、結局は球の体積の分だけあふれる=球の体積を求める問題。

ただ、そもそも球の体積の公式を覚えていない生徒は実際にいるので、正答率は必然的に下がる。

(2)証明の形だったので、それだけで避けてしまった生徒はいるかもしれない。

逆円錐と円柱のすき間の体積の比較。

すき間=円柱ー半球

の仕組みには気づけた生徒はさすがにそれなりにいるだろう。

ただ、どうしても順に計算してしまうので、計算ミスで自滅してしまう生徒が多いのが空間図形

すき間=5×5×π(底面積)×5(高さ)ー4π5³/3×1/2

後ろを約分して5³πー2×5³π/3

通分して3×5³πー2×5³π/3

つまり5³π/3

計算しないでまとめれば非常に簡単になる。

(3)これも足したり引いたりの関係で、結局正解にたどり着けない生徒は上位校でも多発しそう。

まず、おもりの体積分あふれるのだが、もともとのすき間の分はあふれないので

あふれた量=図4のすき間ーおもりの体積

すき間の方は容器と水の部分が相似の関係なので、容器×相似比で求める

容器=10×10×π(底面積)×10(高さ)×1/3

相似比は容器:水=10³:9³=1000:729

なので、すき間の比は1000ー729=271

なので、【すき間の体積】=10³π×1/3×271/1000

ちょうど1000が約分できるので、271π/3

おもりの方は、おもりの底面がちょうど円錐の側面に触れるので、おもりの下の円錐の部分が容器と相似

おもりの半径が4㎝なので、おもりの下の円錐の高さが4㎝=おもりの高さは6㎝

【おもりの体積】=4×4×π(底面積)×6(高さ)=96π

よって、【あふれる量】=96π(おもり)ー271π/3(すき間)=17π/3

 

手計算で54.2となった。

空間がどう出るか微妙だったので、少し盛った部分もあるので、もう少し下がることもあるかもしれない。