今日の一針、明日の十針-今すぐ手を打たなければならないことを先延ばししてはならない-

2015/01/14 投稿

A stitch in time saves nine.

昨日の『転ばぬ先の杖』つながりで

今日縫っておけば、1針縫うだけで済むほころびも、ほっておくと大きくなって10針縫うことになってしまう

→いまできることは早めに手を打っておく

→転ばぬ先の杖

ということで、この英文の対訳を『転ばぬ先の杖』とすることもあります(ちょっと違う気もしますけど)

 

『stitch(針)』が主語で『名詞』。

『in(~の中に)』が『前置詞』で、『time(時間)』を引き連れているのですが

『in time』はこの組み合わせで色々な意味がある『熟語』として覚えることになります。

が、「時間の中で」→「時間内に」→「間に合って」→「時間通りに」→「ちょうどよい時に(適時に)」

という一連の意味の変化の流れがつかめれば、状況に応じた訳ができるでしょう。この場合はいちばん右。

問題は『in time』が2語で『名詞』を修飾するので『形容詞』になるのですが、英語では2語以上は前からでなく、後ろから修飾するというルールがあるので、注意。

long stitch 「長い

stitch in time 「適時の(ひと)

 

この長い『主語』の後ろの『save』が『動詞』

『save』は、何かを別の安全で確実な場所へ移動するイメージが大切で

「人などを」安全な場所へ移動する→「~を救う」

「自分を」安全な場所へ移動する(=危険な場所から抜ける)→「うまく切り抜ける」

「金銭などを」確実な場所に移動する→「蓄える、とっておく」(「データをセーブする」はこれ)

「労力、費用を」確実な場所に移動する→「節約する」

「節約する」→「しなくてすむ」→「省く」

一見するとバラバラな訳も、ひとまとまりでつかめると思います。今回はいちばん下の意味。

 

A stitch in time saves nine(stitches).

「適時の1針が9針を省く」

軽く訳しましたが、『stitch』は生物ではないので『無生物主語』

特に英訳では日本人を非常に困らせる曲者です。

It was (     ) (     ) little money.

「それでいくらか金が浮いた。」

となると、とたんに難しくないですか。

「それでいくらか金が浮いた。」←「それは私にお金を節約させる

「それ」が主語になったときに、適当な『動詞』が浮かぶようになると、立派な英語脳です。

 

ここで、日本語と英語で数字が違うじゃん!

と思った人はいませんか?

では算数の授業(笑)

日本語では『今日は1針』『明日は10針』です。

英語では『今日は1針』ですが、その1針が『明日の9針』を『省き』ます。

つまり、省かれないとすれば、『明日は1+(省かれたはずの)9=10針』となります。

『動詞』が『save』だったがゆえのからくりですね。

 

ちなみに、これはもともとが東洋のことわざで

実はこの針とは裁縫の針ではなく、鍼灸治療で使う針のことだそうです。

つまり、いま打てば1針で済むような病気も、ほうっておくと10針打たねばならなくなるほどひどくなってしまう。

という戒めからきているとのこと。

なんとなく納得いかなかった針という表現が、すっと入ってきた瞬間でした。